あんしん生命で売り止めとなった個人年金保険の次なる策
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東京海上日動あんしん生命の個人年金保険の売り止め
老後生活に向けた資産形成として代表的な商品「個人年金保険」ですが、あんしん生命の個人年金保険は、「個人年金保険ならあんしん生命」と言われるほど高い返戻率を誇っていました。
しかし低金利時代に突入して以来、その高いパフォーマンスを維持できなくなり、残念ながら2016年7月にこの商品は売り止めとなってしまいました。
あんしん生命だけではなく、各社運用状況も厳しくなり、貯蓄性商品の予定利率の相次ぐ改定が行われ、様々な貯蓄性商品の販売停止や返戻率の低下という事態に陥っています。
個人年金保険の売り止めから1年後、2017年8月にあんしん生命は、新変額保険(有期型)「マーケットリンク」なる新たな資産形成の手段の販売をスタートしました。
変額保険「マーケットリンク」の誕生
個人年金保険は、加入した時点で将来の受取金額が確定しているため、「いくら払っていくら戻るのか」が一目瞭然でした。
しかし、変額保険での資産形成は、支払う保険料を契約者の責任の下で運用を行う必要があるため、将来受け取れる金額が変動します。
つまり、増える可能性もあるし減る可能性もある「リスク性商品」となります。
個人年金保険を売り止めたあんしん生命の次なる一手は、「契約者自身で運用を行って増やしてくださいね」という答えでした。
保険会社側で運用リスクを抱えきれなくなってきています。
マーケットリンクの特徴
保険の仕組みとしては「養老保険」になります。
死亡保障と資産形成を兼ねることができる商品性となっており、保険期間を定め、満期が到達すると満期保険金がおりる仕組みです。
支払った保険料の一部が「特別勘定」という別の場所に管理され(積立金)、この積立金をあんしん生命が用意している8種の特別勘定(投資信託)で運用していくことになります。
似ている商品として、アクサ生命のユニットリンクがあります。
マーケットリンクの投資リスク
変額保険で代表的なものに、ソニー生命の変額保険終身型「バリアブルライフ」があります。
マーケットリンクとの最大の違いは、保険期間が「有期」か「終身」にあります。
バリアブルライフの評判の高さの理由の一つに、運用が仮に失敗してしまったとしても、死亡保険金が一生涯最低保証されていることにあります。
しかし、マーケットリンクに関しては、運用が失敗してしまった場合、満期を迎えるとその時点での運用結果である満期保険金がおりて、保険が終了してしまいます。
死亡保障は期間限定、満期が来ると自動的にマイナス成果が確定、つまり「損失」が生じてしまうところに大きなリスクがあります。
「保険」なのに「保険」がない?
個人年金保険は、まさに将来の「貯蓄」であり、積み立ててきたお金を増やして返してもらう仕組みであり、確実にお金が増えて戻ってきます。
「増えて返ってくること」にその意義があるでしょう。
マーケットリンクは、増えて返ってくることもあるかもしれないし、減って返ってくるかもしれません。
しかも、保険期間が有期型であるマーケットリンクには、ソニー生命のバリアブルライフのように、万が一運用がうまくいかなかった場合の「保険」がないのです。
資産形成として保険を使うこと
生命保険は、どこまで行っても「保険」であり、運用効率という面では、投資信託には及びません。
変額保険は、投資信託に保険の機能が付いたものであり、かならずその分投資効率は落ちてしまいます。
変額保険には、①保険契約の締結および維持に必要な費用、②保険料払込みの免除に関する費用、③死亡保険金・高度障害保険金を支払うための危険保険料に相当する費用、④基本保険金額を最低保証するための費用、⑤解約・減額時に負担する費用、⑥年金支払特約にもとづく満期保険金の年金受取時に負担する費用、という投資信託には存在しない諸費用が発生し、コストになります。
当然ですが、これらのコストは、運用パフォーマンスを悪化させる要因となります。
資産形成目的であるのであれば、それに特化した商品で行うことが合理的だと感じます。
好調なファンド
各保険会社の変額保険の特別勘定(ファンド)の中には、とても好調な運用成績を収めているものも存在することは確かです。
しかしそれはあくまで結果論であり、将来を保証するものでもなく、また、割高なコストを支払った結果での数値です。
最初から変額保険ではなく、投資信託そのものに投資していたらより高いパフォーマンスを実現できていたでしょう。
保障と資産形成の両立
生命保険のそもそもの目的を考えたとき、万が一のリスクに備えることが大前提です。
しかし、資産形成のための運用を行うことは、あえてリスクを取る行為です。
その上、マーケットリンクの場合は、保障期間が有期型となっており、満期保険金を受け取ったと同時に死亡保障は消滅します。(希望に応じて解約返戻金相当額を活用して終身保険に移行することは可能。)
生命保険のそもそもの存在意義を考えたとき、保障と資産形成、「リスクに備えること」と「リスクを取ること」の両立は難しいのではないかと感じます。
あんしん生命で売り止めとなった個人年金保険の次なる策のまとめ
高い返戻率を誇ったあんしん生命の個人年金保険ですが、変額保険という手を出さざるを得なかったのは、保険会社としての限界なのかもしれません。
リスクを取って資産を増やすことは、生命保険加入の目的からズレているように思えます。
ただ、必ず損をすると決まった訳ではありませんので、老後資金の一部で行い、万が一損をしても老後の生活に影響のない金額内で行うことには問題はないと感じます。
これからの時代は、保険にしろ投資にしろ、積極的にリスクを取らざるを得ない時代になっていくのでしょう。