しあわせずっとnzは為替レートの乱高下に耐えうるか
目次
「しあわせずっとnz」と為替レート
三井住友海上プライマリー生命が取り扱っている目標設定円建終身移行特約付利率更改型終身保険「しあわせずっとnz」は、主に銀行窓販専用商品として、銀行で販売を行っている商品です。
同社が取り扱いをしている「しあわせずっと」という商品は、一時払い型の保険商品であり、まとまった大きな金額を払い込み、外国通貨で運用を行うことで資産の増加を図り、指定した目標値に到達した段階で為替変動がない円建ての終身保険に自動的に移行する特徴を持った商品です。
「しあわせずっとnz」は、運用通貨をニュージーランドドルに限定し、相対的に高金利である外国通貨での運用を行う商品です。
しかし、ニュージーランドドルという金利のみを意識した運用商品は、為替レートの変動が非常に大きく、非常にハイリスクをはらんでおり、本来の目的である「保険」を考えると、非常に怖い商品性となっています。
果たしてニュージーランドという国が、投資対象国として値するかについて、検討してみたいと思います。
しあわせずっとnzの商品性について
以前に同類の商品「しあわせずっと」についての商品性について述べた記事がありますので、詳細は下記のリンク先をご確認いただければと思いますが、商品性を簡単に述べると以下のような特徴があります。
・一時払い型の保険で、加入時の為替レートで算出した金額をまとめて支払う。(外貨での入金も可。)
・以降、ニュージーランドドルで運用され、ニュージーランドドル建ての金額が死亡保障として一生涯続く。
・支払った円での保険料額に対してどのくらい増やしたいか「目標値」を105~200%の範囲で指定し、契約から1年が経過した以降は、毎営業日にその時の為替レートで算出して目標の達成度合いを自動的に判定し、 目標額以上となったら為替変動がない「円建ての終身保険」に自動的に移行する。(目標値は設定しないことも可。)
・2017年12月29日現在のニュージーランドドルの予定利率は2.56%となっており、10年間は保証。10年目以降も更新する場合には、その時点での市場金利情勢を踏まえてあらたに予定利率が10年間保証で設定される。
簡単に言うと
一時払いで大きな金額を支払い、高金利通貨による運用を図るとともに、一生涯の死亡保障も兼ねることが出来る、運用と保障を備えた商品性であると言えます。
しかし、保険料支払い時や死亡保険金・解約返戻金の受け取り時にはニュージーランドドル建てで行われるため、それぞれの時点での為替レートで両替を行うため、日本円での金額が確定していません。
為替レートによっては、大きな利益を生む可能性がある反面、大きな損失を生じるリスクをはらんでいる商品性となっています。
ニュージーランドドル建て商品
「しあわせずっとnz」の最大の特徴は、ニュージーランドドル建ての運用となる点です。
米ドル建てや豪ドル建ての商品は他社でもよく見かけますが、ニュージーランドドル建ては非常に珍しい商品です。
しかし、ニュージーランドドル建てで商品を持つことは、ニュージーランドという国に投資することを意味します。
ニュージーランドという国への投資が本当に魅力あるものなのか、見てみたいと思います。
高金利国
ニュージーランドの通貨「ニュージーランドドル」は、オーストラリアドルと並び非常に高金利な通貨となっています。
ニュージーランドの政策金利は、2017年12月現在1.75%となっており、10年国債の利回りも2.75%となっており、先進国の中では極めて高い水準となっています。
しかし、なぜこんなにも高い金利政策を採っているのかというと、ニュージーランドという国は、人口が約409万人と非常に少なく、人口約927万人を誇る東京都の半分以下の規模です。
経済規模も貿易量も少ないため、海外からの資金の流入を図るため、高金利政策を採らざるを得ない状況にあります。
また、その規模の小ささから通貨の流通量が少ないため、大量の通貨を日々売り買いしている機関投資家がニュージーランドドルを売り買いするだけで、為替レートが簡単に乱高下する、リスクが高い通貨であると言えます。
過去の為替変動
過去10年間のニュージーランドドルの値動きをチャートで見てみます。(参考チャートはH・S証券から引用。http://www.hs-sec.co.jp/bond/foreign/chart/nzd.htm)
2007年に97.73円だったニュージーランドドルは、2008年の世界金融危機において、1年間でなんと44.19円まで暴落し、その騰落率は50%にもなった経験があります。
先進国通貨といえども、その価値が半分以上も落ちることが「有り得る」通貨なのです。
これほどの変動域を持つ通貨で「保険」をかけておくという行為は、非常にリスクが高く、本来の保険の意義を考えると、本末転倒のように思えてなりません。
しあわせずっとnzの問題点
「しあわせずっとnz」は、同種商品「しあわせずっと」と同様に、10年目以前に保険を解約してしまうと、市場価格調整が行われ、解約時点の解約返戻金から、市場調整価格や解約控除額が差し引かれてしまいます。
そのため、10年目といった節目に解約といった手続きを行わざるを得ない商品性となっており、この仕組みが、為替レートの変動が大きい通貨と相性を悪くしてしまっています。
万が一、為替レートが乱高下するような状況があったときにも、「損が広がる前に手放したい」といったときに、市場調整価格や解約控除額がさらにマイナスとして働いてしまい、大きな損失を生じてしまうリスクがあります。
「保険」という商品特性を「運用」と組み合わせしまうことは、為替レートの変動が大きい通貨ほど悪影響になると言えるでしょう。
しあわせずっとnzは為替レートの乱高下に耐えうるか、のまとめ
運用をスタートしようと思う人は、たいていマイナス要素を軽視してしまい、高金利といったプラス要因ばかりを意識してしまいます。
しかし、運用の大原則は、「どれだけリスクを最小化」した上で、高いパフォーマンスを狙うことだと思います。
どうしても高い金利を享受したいのであれば、ニュージーランド債を購入したほうが、その他リスク要因が同じであるため、より高い結果を狙えると思います。
保険と運用の両立は、このご時世では非常に難しいでしょう。