あいおい生命の低解約返戻金型終身保険は保険の目的から外れている
目次
あいおい生命の低解約返戻金型終身保険
三井住友海上あいおい生命で取り扱っている、低解約返戻金型終身保険「&LIFE(アンドライフ)」は、終身保険の文字通り、「一生涯の死亡保障」でありながら、保険料払込期間中の解約返戻金を抑制することで保険料を割安にした「低解約返戻金型」の終身保険となっています。
また、積立利率変動型の商品で、毎月積立利率が市場金利により反映され、年0.5%が最低保証されている商品です。
毎月積立利率が見直しされるため、将来、金利とともに積立利率が上昇していけば、保険金額や解約返戻金が増加していくため、貯蓄性に期待できる特徴となっています。
しかし、生命保険の本来の目的「死亡保障」という観点でこの商品を見てみると、もっとも重要な点が欠けているように思えます。
この商品の中身を簡単に解説した上で、問題提起させていただきます。
あいおい生命の低解約返戻金型終身保険の商品性
一生涯の死亡保障を持つことができ、かつ、貯蓄性があるため、老後資金の準備として活用することができます。
保険料払込期間中の解約返戻金を抑えているため、保険料が割安となっていますが、保険料払込期間中に保険を解約したときに戻ってくる解約返戻金は、少なくなってしまうという仕組みになっています。
積立利率が毎月見直しされる上に、現在の積立利率は年0.5%が保証されており、今後金利が上昇していけば、積立金が増えていき、結果として保険金額や解約返戻金の増加が期待できます。
その他、特徴を説明していきます。
年金受取
保険料の払い込みが終了した以降は、そのまま死亡保障を続けることができることの他に、死亡保障の全部もしくは一部を「年金」として受け取ることが可能です。
また、約款所定の要介護状態と認定された場合においても、「介護年金」という形で、死亡保障の全部もしくは一部を年金として受け取ることができます。
どちらも、保険料の払い込みが終了した以降に移行できるものになりますので、注意が必要です。
終身介護保障特約(無解約返戻金型)
公的介護保険制度に定める「要介護2」以上の状態に該当していると認定された場合に、年金・一時金という形で介護保険金の支給を受けることができます。
いわゆる「介護保険」として活用できる特約であり、金額を特約付加時に設定することになります。
特約部分から保障される部分となるため、この特約を付加した分、保険料が上がります。
保険料払込免除特約
約款所定の特定疾病(悪性新生物・心筋梗塞・脳卒中)、約款所定の特定障害(国民年金における障害基礎年金の障害等級1級に相当する状態)、約款所定の要介護状態が180日以上継続していることが医師によって診断確定、いずれかに該当した場合に、それ以降の保険料の支払いが免除される特約です。
この特約を付加した分、保険料は上がってしまいます。
区分料率適用特約
健康状態、喫煙歴等の状況、自動車等の運転履歴に応じて、保険料が割引される特約です。
標準体、非喫煙者標準体、非喫煙者優良体、SD(セーフティドライバー)非喫煙者標準体、SD(セーフティドライバー)非喫煙者優良体と区分され、順に保険料の割引が大きくなっていきます。
喫煙の有無や健康状態に加えて、自動車の運転履歴も考慮される、面白い仕組みとなっています。
シミュレーション
あいおい生命の低解約返戻金型終身保険を、契約年齢:30歳男性 保険期間:終身 保険料払込期間:60歳 保険金額:1,000万円 SD非喫煙者優良体の条件で、試算を行ってみます。
月払い保険料:25,510円 トータル保険料額:9,183,600円
同様の条件で、オリックス生命の終身保険ライズでも試算を行ってみます。
月払い保険料:21,740円 トータル保険料額:7,826,400円
保険料が最も安くなる「SD非喫煙者優良体」での試算でも、毎月の保険料の差が3,770円となり、トータルでは約135万円もの差になりました。
解約返戻金
オリックス生命の終身保険ライズの場合、60歳払込で翌年61歳での解約返戻金額は約875万円となり、その返戻率は111.8%になります。
一方、あいおい生命の場合、積立利率変動型となっているため、今後積立利率が年0.5%、年0.75%、年1.00%で「常に一定」で推移したと仮定した場合の解約返戻金と率を出してみます。
【年0.5%の場合】解約返戻金:約935万円 返戻率:約101.85%
【年0.75%の場合】解約返戻金:約972万円 返戻率:約105.88%
【年1.00%の場合】解約返戻金:約1,011万円 返戻率:約110.13%
保障から見るあいおい生命の低解約返戻金型終身保険
自分がいつどこで亡くなってしまったとしても、決まった金額を家族に残すことができる「死亡保障目的」として良く活用される終身保険ですが、死亡保険金額1,000万円を家族に残すために、いくら費用がかかるのか、といった観点で両者の保険を見比べてみると、あいおい生命の終身保険は非常に「非効率性」が際立った商品性となっています。
オリックス生命の終身保険ライズの場合、1,000万円のお金を残すために約782万円の費用で済みますが、あいおい生命の終身保険の場合、1,000万円残すために約918万円かかります。
「少ない費用で大きな保障を得ることができる」という生命保険の本来の意義を考えた時、果たしてあいおい生命の終身保険が、その目的達成のために適していると言えるでしょうか?
貯蓄性重視の観点を考慮してみても、オリックス生命の終身保険ライズと比べて劣っているという印象を受けます。
積立利率が変動し、仮に今後金利上昇局面が出てきて解約返戻金が増えたとしても、保障のために「いくら支払うのか」ということを考えたとき、保険料負担が大きいあいおい生命の終身保険は、生命保険の合理性を欠いているを言わざるを得ないでしょう。
あいおい生命の低解約返戻金型終身保険は保険の目的から外れている、のまとめ
生命保険は、少ない費用で最大限の効果をどれだけ発揮できるのか、という点で良し悪しが決まると思っています。
それは、毎月の保険料の負担を行うということは、支出として出て行く分の金額の機会損失になるからです。
私は、同じ金額の保障額を確保するにあたって、より少ない費用負担で済ませることができるのであれば、あえて高い負担を選ぶ非合理的な選択はしたくはありません。
貯蓄率の数%の大小の差よりも、日々の支出を軽くできた分だけ、満足度が高いと感じるからです。