運用商品として見るドル建て保険の本当の利率

ほけんケア~ドル建て保険も理解できた!保険について本気出して勉強した主婦のブログ

子供のための貯蓄型学資保険の検討からドル建て保険の存在を知り、様々な保険を勉強してきました。複雑でわかりにくい保険に関する内容を少しでも理解しやすくなるためのブログです。

運用商品として見るドル建て保険の本当の利率

   

ドル建て保険と利率

日本銀行によるマイナス金利政策の導入の余波として、2017年4月に各保険会社が保険料率の引き上げを実施し、各社取り扱っている円建ての貯蓄性商品の返戻率は大きく下がりました。

そのため、相対的に金利が高い外国通貨、とりわけ米国ドルで運用する商品に注目が当たりはじめ、ドル建て保険を取り扱っている保険会社の販売員は、ほぼドル建ての保険を提案しているようです。

提案の際には「返戻率の高さ」をこぞってアピールしているという声を各方面からよく聞きますが、運用商品としてドル建て保険を見てみると、実は仰天するほど運用効果が高いとは言えません。

しかし、多くの人は、見かけ上の数字ばかりに目を奪われてしまい、率が良いと思ってしまうようです。

今回は、ドル建て保険の「利回り」に着目し、本当に運用目的として加入する価値があるのかどうか検証してみたいと思います。

返戻率と利率

予定利率と積立利率

ドル建て保険を検討もしくは提案を受けた場合、予定利率や積立利率という言葉が出てきます。

保険料は、死亡予定率、予定利率、予定事業費率の3要素から構成されているという話はよく聞きますが、もっと分かりやすくするため、以下の説明をします。

保険料は、「①会社経費に充てられる部分」「②保険金を支払うための責任準備金の積立て部分」「③運用に回し還元を行う部分」に分けられ、予定利率は②に影響し、保険料の金額と解約返戻金に影響します。

保険料の金額内訳
保険料
1.会社経費に充てられる部分2.保険金を支払うための責任準備金の積立部分3.運用に回し還元を行う部分

一方、積立利率は、③部分の解約返戻率に影響します。

つまり、支払った保険料の全額を運用に回すわけではなく、保険会社の経費分、死亡保障のための責任準備金部分を、それぞれ「差し引いた」金額が、積立利率によって運用されるため、経費率が高い保険会社の商品は、運用に回る額が減ってしまうため、パフォーマンスが悪くなります。

ドル建て保険の返戻率

契約年齢や保険料払込期間によって解約返戻率は大きく変わるため、試算例として、ジブラルタ生命の米国ドル建終身保険(低解約返戻金型)への加入を前提とし、契約年齢:30歳 保険料払込期間:60歳 の条件で見てみます。

月払い保険料:131.10ドル

トータル保険料:47,196.00ドル

60歳時点での解約返戻金:56,347.30ドル

60歳時点での解約返戻率:119.39%

ドルベースの利回り

利回りは、予定利率や積立利率とは異なり、「投下した元本が年あたりで何%の運用ができるか・できたか」を測る指標です。

つまり、運用商品としてドル建て保険を検討するためには、この利回りが最も重要な数値となります。

トータル保険料が47,196.00ドル、30年間で56,347.30ドルとなるようですので、計算してみます。(単利計算で行います。)

(56,347.30ドル - 47,196.00ドル) ÷ 47,196.00ドル ÷ 30年 × 100

結果、0.64%(年)という運用効果のある商品のようです。

利回りで見るドル建て保険の運用効果

例えばですが、予定利率(積立利率)が年2%のドル建て保険と、年利回り0.64%のドル建て保険、どちらに加入したいと思えるでしょうか?

人間というのは不思議で、数値や率が高い商品に魅力を感じてしまう傾向があるのですが、実際には年利回り0.64%のドル建て保険のほうが、運用パフォーマンスが大きいのです。

ただ、それでも年利回り1%すら超えない金融商品には、私は何も魅力を感じません。

ドルベースという盲点

上記においては、ドルベースでの利回りを計算してみましたが、実際にドル建て保険に加入する場合は、ドル通貨で保険料を支払う選択をされる方はほとんどいらっしゃらないでしょう。

つまり、本当に重要な点としては、「円で実際に支払った金額に対して、円で実際に受け取る金額」で考えなければ意味がありません。

ドルベースでの試算上運用がプラスであったとしても、実際には支払ってきた金額よりも、戻ってくる金額が少なく、つまり損をするケースは十分にあり得ます。

しかし、ドル建て保険の盲点として、自分が日本円でいったいいくら支払っているのか、支払ってきたのかが「見えない・分からない点」にあります。

いくら日本円で支払ってきたか分からない状態では、実際の返戻率や利回りの計算を行うことができないため、本当に得をしたのか、損をしたのかが、検証すらできないというリスクを抱えている商品性と言えます。

保険に入る目的を明確に

「返戻率がどのくらいか」「利率はどのくらいか」これらの数字ばかりを気にされる方は、保障目的としてのドル建て保険は辞めておいたほうが良いでしょう。

そもそも生命保険の意義は、貯めることではありません。

「万が一の際に、残された家族が困らないようにする」ためが本来も保障目的です。

返戻率や利率といった議論は、「解約」を前提とした話になるため、解約した時点で保険はなくなります。

「家族に残したい」といった思いは、解約前提の保険では達成できないでしょう。

運用商品として見るドル建て保険の本当の利率のまとめ

利率とは非常に曖昧な言葉です。

運用として考えるのであれば、いくら投資していくら戻ってきたのか、いわゆる「利回り」で吟味しなければ意味がありません。

予定利率、積立利率、といった数値に惑わされるのではなく、支払った金額に対してのリターンをしっかりと考える必要があるでしょう。

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