「たのしみワンダフル」の評価はかつては高返戻率を誇ったが見る影もない
目次
住友生命の個人年金保険「たのしみワンダフル」の評価
かつては、「個人年金保険をするなら住友生命」、と言わしめたほど高い返戻率を誇っていた住友生命の個人年金保険「たのしみワンダフル。」
日銀によるマイナス金利の影響の余波をもろに浴びてしまっているのか、現在はそのパフォーマンスが非常に下がってしまっており、当時の栄華は見る影もありません。
住友生命だけの話ではなく、現在はどの保険会社も円建ての貯蓄性保険の魅力がなくなってしまっており、契約者に損失リスクを押し付ける外貨建ての保険や、自身で運用先を決める変額保険の販売にシフトする動きとなっています。
当時の「たのしみワンダフル」は、私が記憶している限りでは、円建ての商品にも関わらず、返戻率は優に130%を超えるほどでした。
現在の「たのしみワンダフル」の現状を再確認してみた上で、改めて評価付けをしてみます。
個人年金保険のメリット
そもそもですが、個人年金保険の最大のメリットは、私は「個人年金保険料控除」を受けることができることにあると思っております。
平成24年に生命保険料控除の制度が改正され、生命保険料控除の対象に新たに「介護医療保険料控除」が新設された一方、各控除項目の限度額が下げられました。
個人年金保険料控除は、旧制度の適用であれば、最高で所得税5万円・住民税3.5万円の控除が可能ですが、新制度の適用の場合は、最高で所得税4万円・住民税2.8万円の控除となります。
毎年、最高で6.8万円~8.5万円の税控除が無条件で行えるため、節税手段に乏しい会社員にとっては非常に効果の高い控除となっています。
「たのしみワンダフル」について
いわゆるオーソドックスな個人年金保険であり、保険料払込期間中の死亡保障を既払込保険料相当額に抑えることにより、年金受取額を大きくする仕組みとなっています。
年金支払開始年齢まで保険料を支払い続ける「全期払い」タイプと、保険料払込期間を年金支払開始年齢よりも短くし、年金支払開始まで据え置く「短期払い」タイプ、どちらかを選択することができます。
据置期間中は年金原資が増えていくため、返戻率は短期払いタイプのほうが高くなります。
年金の支払いは、5年・10年・15年の確定年金もしくは、年金総額保証付終身年金を選ぶことができます。
告知が不要となっているため、健康状態に問題がある方でもご加入することができます。
保険料割引制度
「たのしみワンダフル」には、月の保険料が所定の金額を超える場合、「たのしみランク」と呼ばれる保険料割引制度が適用となります。
保険料が割り引かれることにより、実質的に返戻率がアップすることになります。
月の保険料が「15,000円」を超えることが条件のようです。
年払い・半年払いの場合は、それぞれ月払いに換算した金額となります。
「たのしみワンダフル」の返戻率
【保険料払込満了:60歳 据置期間:5年 年金支払開始:65歳 年金受取方法:10年確定年金 月払い保険料:15,000円】
この条件で、住友生命の資料をもとに男女別で返戻率を試算してみます。
【男性】
契約年齢 | 払込保険料総額 | 年金原資 | 一括受取率 | 基本年金額 | 年金受取総額 | 年金受取率 |
---|---|---|---|---|---|---|
20歳 | 720万円 | 約764万円 | 約106.1% | 77.88万円 | 778.8万円 | 約108.1% |
30歳 | 540万円 | 約563万円 | 約104.3% | 57.41万円 | 574.1万円 | 約106.3% |
40歳 | 360万円 | 約370万円 | 約102.9% | 37.79万円 | 377.9万円 | 約104.9% |
【女性】
契約年齢 | 払込保険料総額 | 年金原資 | 一括受取率 | 基本年金額 | 年金受取総額 | 年金受取率 |
---|---|---|---|---|---|---|
20歳 | 720万円 | 約764万円 | 約106.1% | 77.88万円 | 778.8万円 | 約108.1% |
30歳 | 540万円 | 約563万円 | 約104.3% | 57.42万円 | 574.2万円 | 約106.3% |
40歳 | 360万円 | 約370万円 | 約103.0% | 37.80万円 | 378.0万円 | 約105.0% |
試算結果から
かつての高返戻率が見る影もない結果となっています。
保険料割引制度が適用となる「月15,000円」という高めの保険料での試算でこの結果ですから、15,000円を下回る保険料の場合は、これらの率よりもさらに低い数値となります。
20歳で40年かけての一括受取率が約106%ですから、1年あたりの利回りは「0.15%」しかないことになります。
「たのしみワンダフル」の評価
個人年金保険は、個人年金保険料控除を考慮すると、控除上限となる年間80,000円の保険料に合わせて加入することが、効率的で好ましいと言われています。
80,000円÷12ヶ月より6,666円となるため、月払い保険料は約7,000円で最も効率的となります。
しかし、7,000円という保険料は、保険料割引制度が適用となる金額未満となってしまいます。
たかだか約105%前後の返戻率のために、無理に割引を求めて保険料を上げる価値があるかと言うと、正直なところ意味がないと感じます。
残念ながら、現状のこの率では、積極的な検討理由は見当たらないと言わざるを得ません。
住友生命の個人年金保険「たのしみワンダフル」の評価のまとめ
昔が非常に良かった商品だけに、現在のこの利率水準は残念なものとなっています。
今の時代背景を考えると、無理に民間保険会社で個人年金保険に加入するよりも、拠出金額が全額所得控除され、運用益が全額非課税という、素晴らしいメリットのある「確定拠出年金」に入ったほうが、何倍もメリットがあると感じます。
だからと言って、ドル建てや変額保険といったリスク性商品に闇雲に手を出すことはおすすめしません。
私は、貯蓄性を保険に求める時代は終焉を迎えているように思えます。