マスミューチュアル生命の賢者のギフトの商品性とは?富裕層の相続税対策向け

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マスミューチュアル生命の賢者のギフトの商品性とは?富裕層の相続税対策向け

   

マスミューチュアル生命の賢者のギフト

マスミューチュアル生命は、米国の総合金融グループ、マスミューチュアル・フィナンシャル・グループの一員であり、2018年3月に日本生命により買収されることが正式に決定しました。

取り扱いの全保険商品は、メガバンクや証券会社が窓口となっており、主に「富裕層」に対する保険販売に特化した保険会社です。

今回は、積立利率金利連動型生存給付金付終身保険(指定通貨建)「賢者のギフト」という商品について解説していきます。

積立利率金利連動型生存給付金付終身保険(指定通貨建)「賢者のギフト」

販売窓口

銀行窓販や証券会社を販売窓口にしている保険会社に多いのですが、商品内容は全く同じであっても、販売窓口によって「商品名」が変わっています。

賢者のギフトは、大和証券での商品名「未来のバトン」、三菱UFJモルガン・スタンレー証券での商品名「プレシャスギフト」、野村證券での商品名「生存給付金付終身保険(円建/外貨建)」と全く同じ商品となります。

しかし、賢者のギフト自体はまだ募集代理店が決まっておらず、販売がスタートしていないようです。

今後、募集代理店が現れれば販売がスタートするため、賢者のギフトという商品自体は現在のところは契約することができません。

商品性は、「未来のバトン」「プレシャスギフト」「「生存給付金付終身保険(円建/外貨建)」と同じため、商品内容についてはこれらの商品を参考にして解説していきます。

商品の特徴

円・米ドル・豪ドルの中から通貨を指定し、その指定通貨で一時払い保険料を支払い、以降その通貨で運用が行われていきます。

この商品の特徴は、「一生涯の死亡保障」を確保した上で、保険期間を通して「生前贈与」を行い、死亡保険金による資産継承と、相続税軽減のための「生前贈与」を同時に図ることができます。

2015年1月より税制改正により、相続税の基礎控除が引き下げられたため、相続税の課税対象者が増加している背景があり、相続対策の一つである「生前贈与」の仕組みを保険に組み入れた商品性となっています。

生前贈与

相続財産に対する税金「相続税」をなくす、もしくは抑えるためには、本人が生存しているうちに、できるだけ相続人に対して財産を贈与してしまえば、税金がかかる相続財産が少なくなるため、非常に効果的な手法となります。

しかし、年間で110万円を超える贈与金額に対しては、高税率である贈与税が発生してしまうため、まとまった金額を一気に贈与することは、大きな贈与税負担を考えるとあまり好ましくはありません。

そのため、1年間(1月1日~12月31日)に110万円を限度とした暦年贈与を、できるだけ長い年数をかけて毎年行っていくことで、贈与税を支払うことなく相続財産を圧縮することが出来ます。

賢者のギフトは、この暦年贈与を「生存給付金」として、指定したご家族に毎年給付できる仕組みがあります。

生存給付金

贈与税の対象となる贈与は、1月1日~12月31日の1年間に行われたものが対象となるため、1回目の生存給付金が支払われる日を、契約日から0~11ヶ月後の範囲内で決めることができます。

生存給付金の支払期間は、「5・10・15・20・30年」から、円建の場合は「20・30年」から選択することができます。

外貨を指定した場合、生存給付金円支払特約を付加することで、生存給付金を円で受け取ることができます。

生存給付金額の算出は、一時払保険料÷(生存給付金支払期間+終身保障倍率)の計算式で求められます。

終身保障倍率

生存給付金額の算出に必要な終身保障倍率は、2.5倍・5倍・10倍から選択することになりますが、生存給付金支払期間に応じて以下のようになります。

2.5倍・・・生存給付金支払期間が5・10・15・20・30年の場合

5倍・・・生存給付金支払期間が10・15・20・30年の場合

10倍・・・生存給付金支払期間が20・30年の場合

死亡保険金

契約から5年間は「基本終身保険金額」として、「一時払保険料-(生存給付金支払期間×生存給付金額)」の計算式で産出されます。

一時払保険料1,500万円、生存給付金支払期間10年、生存給付金額100万円の場合、基本終身保険金額は500万円となります。

5年経過後は、死亡保障は増加することになり、基本終身保険金額と積立利率、被保険者の年齢・性別によって算出されます。

生存給付金支払期間中に被保険者が死亡した際には、未払分の生存給付金はしっかりと支払われるため、死亡保険金は一時払保険料を下回ることはありません。(外貨建の場合はその時の為替状況次第となるので、損失が生じるリスクがあります。)

そのため、一時払保険料と同額の「最低死亡保障」が確保された商品であると言えます。

積立金額

一時払保険料から契約初期費用が差し引かれたものが積立金額となります。

契約初期費用は、一時払保険料に対して、米ドル・豪ドルが4.0%、円で2.0%となります。

この積立金額は、契約時の積立利率を元に運用されていきます。

契約時の積立利率は、1か月に2回見直しされており、2018年4月1日~4月15日の期間における契約の場合は、米ドルで最高2.26%、豪ドルで最高1.99%、円で0.25%となっています。

被保険者の年齢と生存給付金支払期間により、米ドルと豪ドルの積立利率は変わりますので、確認が必要です。

解約返戻金

通貨指定型の一時払保険に多いのが、契約途中に解約した場合の「市場価格調整」です。

解約計算基準日の市場金利が契約日の市場金利よりも高い場合には、相対的に契約中の商品の価値が下がるため、解約返戻金が少なくなる傾向にあります。

逆に、解約計算基準日の市場金利が契約日の市場金利よりも低い場合には、解約返戻金が増加する傾向にあります。

解約計算機準備の市場金利次第のため、増える可能性もあれば減る可能性があることに注意が必要です。

積立金額に対して市場価格調整が行われたものが、解約返戻金となると理解すると良いでしょう。

受取円貨額指定制度

指定通貨を外貨建にした場合、毎年支払われる生存給付金は、為替変動によっては、大きく増える可能性もあります。

例えば、贈与税回避のために、生存給付金額を110万円に抑えているにもかかわらず、為替変動により万が一この金額を超えてしまうと贈与税の対象となってしまいます。

そのため、毎年支払われる生存給付金の円の金額の上限を指定できるのがこの制度です。

仮に指定額を110万円とした場合に、円換算後の生存給付金額が110万円を超えるときには、超えた分の金額は、受取人ではなく「契約者」に支払われることになります。

その場合には、雑所得扱いとなりますので、ご注意ください。

実際のシミュレーション

賢者のギフトのパンフレットもとに、具体的な数値でシミュレーションしてみます。

 ■契約者70歳女性■一時払保険料150,000ドル■生存給付金支払期間10年
■生存給付金受取人■円換算一時払保険料1,500万円■終身保障倍率5倍
■指定通貨米ドル■換算レート1米ドル=100円■積立利率1.00%

毎年の生存給付金は10,000ドル(1米ドル=100円の場合100万円)、契約から5年間の基本終身保険金額は、50,000ドル(1米ドル=100円の場合500万円)、10年間生存給付金を受け取り、一生涯の死亡保障は59,198ドル(1米ドル=100円の場合約591万円)となります。

現在の積立利率は2%以上ありますので、終身保険金額はもう少し高くはなるでしょう。

1,500万円の一時払保険料を支払い、10年かけて1,000万円の生前贈与を行ったことで相続財産を圧縮でき、約600万円の死亡保険金額を遺族が受け取ることになります。

この保険を販売したことにより、募集代理店側は6,000ドル、日本円にして約60万円の販売手数料を得たことにもなります。

賢者のギフトは良い商品なのか?

この商品の最大のメリットは、生前贈与の際の「贈与契約書」といった、贈与取引の記録を自分で作成する手間が省けることが挙げられます。

毎年支払われる生存給付金は、マスミューチュアル生命が支払い通知を生存給付金受取人に直接送付するため、記録として残ります。

そのため、贈与契約書といった書類の作成が不要となります。

 

また、相続対策として生命保険の非課税枠を使うことで、相続財産を圧縮することができます。

無告知での加入が可能ですので、健康状態に関わらず、高齢でも加入できることもメリットです。

賢者のギフトの評価:私はお勧めしません

相続の観点からはメリットがある商品ではありますが、私はこうしたタイプの商品はお勧めしません。

それは、私がこの商品性について文章化している際にも感じましたが、仕組みが複雑すぎであり、契約者がその商品性・リスクを理解できない可能性が高いからです。

この商品は、主に証券会社が募集代理店として販売している商品ですが、相続税に関する対策のための仕組みなので、そのターゲットは富裕層でしょう。

担当者に言われるがまま契約してしまう風景が容易に浮かんでしまいます。

リスク性のある保険商品についてのトラブルは、「理解できない」ものを「言われるがまま」に契約してしまうことがほとんどです。

マスミューチュアル生命の賢者のギフトの商品性とは?のまとめ

相続対策の1つとして、検討することはありだとは思います。

しかし、相続対策できる手段は、この保険に限った話ではありません。

できることなら、他の生命保険の仕組み、生命保険以外での手段など、いくつかの選択肢を出したうえで、どれが良いのかと「選ぶ」必要があるでしょう。

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