自由診療にも備えられるという名目のチューリッヒ生命のがん保険は果たして現実に即したものなのか?
目次
自由診療にも対応したチューリッヒ生命のがん保険「終身ガン治療保険プレミアムDX」
2018年4月、チューリッヒ生命よりガン治療における自由診療にも対応したがん保険「終身ガン治療保険プレミアムDX」が誕生し、費用が高額化する自由診療への備えを確保することができるようになりました。
日本においては混合診療を禁じており、自由診療を選択した場合にはその他保険診療分の費用もすべて10割負担となってしまうため、治療の選択を広げる代わりに膨大な医療費を負担しなくてはなりません。
特にがん治療の分野においては、海外では承認済みであるが国内では未承認となっている抗がん剤が多数存在しており、その他疾病の治療費に比べて非常に高額になってしまう傾向にあります。
しかし、自由診療にも対応しているチューリッヒ生命のがん保険「終身ガン治療保険プレミアムDX」では月の保障額において自由診療の最高額をカバーしきれていないのが現状です。
高額な自由診療による治療費に対して備えておくために、果たして終身ガン治療保険プレミアムDXというがん保険がどの程度役に立ってくれるかどうか、実際の未承認抗がん剤の費用などのデータをもとに考えてみたいと思います。
国内未承認の抗がん剤について
チューリッヒ生命のがん保険が自由診療にも備えることができることの是非を問う前に、そもそもがん治療における自由診療とは何なのかについて理解しなければなりません。
欧米で承認を得ているが国内では未承認である抗がん剤の種類は、2018年8月現在約65種類ほど存在しており、薬剤費がわかっているうちの約8割、45種の1か月の薬剤費は、「100万円」を超えているそうです。(国立がん研究センター調べ)
このうち3種については、月1,000万円以上になるようであり、保険診療が適用にならないこれら抗がん剤費用は、かなりの金額になることがわかります。
2016年4月から「患者申出療養制度」がスタートし、患者の申し出によりこれら未承認薬を使いたいという旨を国に申請すると認可されると、10割負担を強いられていた保険診療分に健康保険が適用されることになります。
しかし、認可に複雑な手続きが必要である点、認可までに1か月以上かかってしまう点などから、その制度自体が形骸化してしまっている感も否めなく、なかなか活用されていないことも事実です。
終身ガン治療保険プレミアムDXの自由診療保障
チューリッヒ生命の終身ガン治療保険プレミアムDXの主契約の保障内容は、「放射線治療給付金、抗がん剤・ホルモン剤治療給付金、自由診療抗がん剤・自由診療ホルモン剤治療給付金」となっています。
ガンと診断された場合に一時金が支払われる「診断一時金」や、がん治療のための入院をした際に給付金が支払われる「入院給付金」、手術を受けた時や通院の際の日額の保障などは、すべて「特約」として任意付加することになります。
一般的ながん保険は、入院して○○円、手術して○○円、通院して○○円というような保障内容が多い中、チューリッヒ生命の終身ガン治療保険プレミアムDXは、放射線・抗がん剤・ホルモン剤による「治療」に主目的を置いたがん保険となります。
入院時の差額ベッド代として日額保障が欲しい、一時金が欲しい、手術保障が欲しい、これらの保障を満たすには、すべて特約で自己選択する必要があります。
自由診療保障
終身ガン治療保険プレミアムDXの自由診療保障の内容は、主契約である「放射線治療給付金、抗がん剤・ホルモン剤治療給付金」の基準月額に対して、「2倍」の金額が支払われることになります。
放射線治療や抗がん剤・ホルモン剤治療を受けた月ごとに支払われる給付金を「月額20万円」と設定すれば、「自由診療抗がん剤・自由診療ホルモン剤治療給付金」は「月額40万円」となります。
自由診療への備えを考えるのであれば、2倍された給付金を考慮したうえで、基準月額の金額を決める必要があるでしょう。
終身ガン治療保険プレミアムDXと実際の抗がん剤治療費
国立がん研究センターの調査により、国内未承認の抗がん剤の月額費用は、薬剤費がわかっているうちの約8割、45種は「100万円以上」となっています。
この実際の費用に対応するためには、最低でも終身ガン治療保険プレミアムDXの主契約基準月額を「50万円」としなければならないことになります。
しかし、実際に終身ガン治療保険プレミアムDXで選択できる基準月額は「30万円」が上限となっており、自由診療時には月額「60万円」しか受け取ることができません。
かつ、主契約基準月額「30万円」とした場合、その他の特約「ガン先進医療特約」「ガン診断特約」「ガン入院特約」「ガン手術特約」「ガン通院特約」などを付加した場合、保険料は30歳男性で月々「5,584円」と非常に高額になってしまいます。
実際の国内未承認の抗がん剤治療にかかる月額の費用「100万円以上」に満たず、その他特約をあれもこれもと付加することにより、結局のところは高額な保険料を負担しなければなりません。
「自由診療に備える」と聞こえは良いが…
結局のところは、未承認の抗がん剤を使用する自由診療にかかる費用には、この「終身ガン治療保険プレミアムDX」1本では難しいでしょう。
自由診療に備えておくには、やはり「自由診療に特化」した保険でないと厳しいと思われます。
個人的にはがん治療において金銭の心配をせず十分な治療を受けるためにはSBI損保のがん保険のような、保険診療・自由診療問わず、「かかった治療費をすべて」保障してくれるタイプのがん保険に加入しておきたいです。
SBI損保のがん保険は5年更新で5年ごとに保険料が上がっていってしまう、最長で90歳までしか更新できない、といったデメリットがありますが、実際にかかる治療費は青天井で補償してくれます。
保険料も、30歳男性であれ">ば月々550円程度の保険料なので、若年時から中年時にかけてのがん保障としてはピカイチだと思います。
自由診療にも備えられるという名目のチューリッヒ生命のがん保険は果たして現実に即したものなのか?のまとめ
自由診療に実際にかかるであろう治療費を考慮せずにこのチューリッヒ生命のがん保険に加入するほど意味のないものはありません。
万が一の自由診療という選択肢を取らざるを得ない状況になったとき、実際にその費用を支払うのは自分自身です。
一定額であればがん保険が保障してくれますが、不足分は治療が続く限り全額自己負担となります。
そもそも自由診療に備えておく必要があるかどうかといった議論もあるかもしれませんが、もし自由診療を考慮したがん保険選びを行うのであれば、チューリッヒ生命のがん保険はまだまだ不安が残る仕組みと感じます。