生命保険で貯蓄をすることに対する誤解とメリット・デメリットについて
目次
貯蓄型生命保険の誤解とそのメリット・デメリットについて
掛け捨て型保険と貯蓄型保険、人間であれば本能的に保険料が無駄にならない仕組みを好むと思いますが、多くの方が「貯蓄」の意味を誤解し、そのメリット・デメリットについてあまり理解していないように思われます。
生命保険で貯蓄を行うことに対して、それは「解約返戻金」なのか「還付金」なのか、という点がポイントとなります。
その両者の違い、そしてメリット・デメリットについて解説し、生命保険で貯蓄を行うことに対して正しい理解の手助けになればと思います。
解約返戻金としての貯蓄型保険
貯蓄型の保険を希望した際に多く提案を受けるのが、「貯蓄」=「解約返戻金」となっているタイプの保険です。
保険の種別としては「終身保険」が主に該当し、円建てであっても、外貨建であっても、積み立てられる保険料は、「解約返戻金」という名の積立金となります。
この解約返戻金というのは、その字の如く、「保険契約を解約」したときに初めて戻ってくるお金となっています。
この点に多くの方が誤解されていらっしゃいます。(5年、10年満期、一括だからという期間の問題ではありません。)
解約返戻金である場合、貯まっている資金を手にするためには、保険に加入する最大の目的である「万が一の際の経済的な死亡保障」を放棄しなければならないということです。
最大のデメリットは死亡保障と解約返戻金は両立しない
保険料が貯まるという機能が例え付いていたとしても、保険を解約しなければその貯蓄は戻ってこないということは、「解約返戻金を放棄して死亡保障を残す」か、「死亡保障を捨てて解約返戻金を手にする」か、二者択一の選択肢を迫られることになります。
某外資系保険会社のドル建ての終身保険の提案を受けられた方からよく聞くのが、「今まで支払ってきた保険料が将来全て戻ってきて、老後資金として活用できたらいかがですか?」と、いかにも美味しそうな説明だそうです。
そして、その貯蓄性を異常にアピールし、本来必要保障額としては過剰すぎる「100,000ドル」もの死亡保障の保険を提案してくるそうです。
死亡保障と解約返戻金、どちらも手に入れるという虫のいい話はなく、両立し得ないものであると理解することが大切です。
解約返戻金で貯蓄することのメリット・デメリットを踏まえて
「将来必ず保険契約を解約する」という前提であれば、死亡保障に解約返戻金を求めても良いでしょう。
しかし、死亡保障に解約返戻金を求めてしまうと、異常なほどの高額な保険料負担を強いられることになり、そしてその保険料を何十年と渡って、結婚や出産などのライフスタイルの変化が生じ家計が厳しくなったとしても、支払い続けなければなりません。
某外資系保険会社では、解約返戻金があることにより、将来的に資金の入り用があっても「契約者貸付」を受けられる、「払済保険」に切り替えて保険料負担を抑えることができる、といった説明がなされるようです。
ただ、そのどちらも「資金不足」が生じた際の話であり、その「資金不足」が生じるに至ったのは、高額な毎月の保険料負担のせいであるということが分からないようです。
「過剰な死亡保障額で保険料が高くても貯まるから問題ない」と、日々の生活はどうなろうが関係ない、といった傲慢な姿勢が垣間見れます。
何のために死亡保障が必要なのか
生命保険で最も大切なことは、お金が貯まることではなく、自分亡き後の大切な家族が経済的に困らない仕組みにあります。
つまり死亡保障には、解約返戻金という一見飛びつきたくなるような甘い蜜は「不要」であり、解約返戻金がなく、割安で無理なく保険料を支払い続けることができるような保険を選ぶことが大切であると言えます。
生命保険を解約して資金を手にするということは、家族の生活がどうなっても良いということになってしまうわけですから。
還付金としての貯蓄型保険
解約返戻金ではなく、還付金として保険料が戻ってくるような仕組みの保険もあり、特に医療保険・がん保険の分野(貯蓄型医療保険・貯蓄型がん保険など)で多く見られるようになってきました。
指定した年齢まで「生存」していた場合に、ご褒美・ボーナスといったような名目で受け取ることができる資金です。
これは、解約返戻金ではないため、保険契約を解約して保障を放棄する必要はなく、還付金を受け取った以降も保障が継続するという、大きな違いがあります。
貯蓄型の保険としてほとんどの方が希望するのが、こういった仕組みなのではないでしょうか?
保障と貯蓄部分が「両立」することになります。
還付金で貯蓄することのメリット・デメリット
掛け捨て型と比べると、やはり若干割高な保険料水準を負担しなければなりません。
某保険会社の還付金型の医療保険の場合、掛け捨て型の保険料の「約1.5倍」程度の高くなっています。
掛け捨て型の医療保険料が仮に「月3,000円」、還付金型の医療保険料が「月4,500円」であった場合、保険料の払込期間が40年間とすると、トータルで支払う保険料は、それぞれ「144万円」「216万円」となります。
掛け捨て型の保険料も、割安とはいえトータルで考えるとそれなりの支出額となります。
月1,500円多く支払うだけで全てが戻ってくるからお得と考えるのか、それとも月1,500円の上乗せ負担は無駄と考えるのかは、加入者の考え方次第なのかもしれません。
生命保険で貯蓄をすることに対する誤解とメリット・デメリットについてのまとめ
「解約返戻金」と「還付金」の違いについて説明させていただきました。
その保険が「保障」と「貯蓄」が両立し得るものなのか、しっかりと確認する必要があるでしょう。
個人的には、「解約返戻金」タイプの貯蓄型保険は「無駄」であると考えますし、保険で貯蓄をしてはいけない。「4つの理由」などで多くの方も意見を述べています。
そもそも「万が一の経済的な保障」を得るために生命保険に加入するのに、保険を辞めなければ戻ってこない貯蓄に何も価値を感じず、貯金代わりにはならないからです。
「還付金」タイプの貯蓄型保険は、負担がどの程度になるか次第で検討に値するのではないでしょうか?