JA共済の「がん全入院全保障特約」はなぜ改廃されなくなったのか?
目次
JA共済にはかつて「全入院全保障特約」があった
JA共済を始め各保険会社の商品は「特約」の改廃が頻繁に行われます。
気づいたら無くなっていた・・・なんてこともよくあります。
JA共済には以前「全入院全保障特約」という特約が存在していましたが、現在はどの共済商品にも載っていません。
今回はJA共済の「全入院全保障特約」をモデルにして特約の改廃についてご紹介したいと思います。
「全入院全保障特約」は入院1日目から保障する特約だった
この「全入院全保障特約」は内容としては、「入院1日目から保障対象にする特約」というものでした。
かつては医療共済やがん共済をメインにこども共済にも付帯できたようです。
逆に言うとこの特約を付帯しないと「入院1日目からは保障しない」商品だったのです。
一昔前のJA共済は入院1日目から保障なんて無かった!
ある程度お年を召した方だと記憶のある方も多いと思いますが、昔の医療保険では入院は5日目とか10日目からというものが圧倒的に多く、JA共済も例外ではありませんでした。
近年でも名残としてあるのは県民共済の通院保障です。
県民共済は通院が14日目になった時点で1日目から保障対象として計算します。
つまり14日通院しなければ、1円も下りないということを意味します。
今のJA共済は入院1日目から日帰りでも保障する
現状JAが販売している医療共済は、入院1日目から日帰り入院でも保障対象になっています。
すなわち「全入院全保障特約」が無くても、同じ効果を持っているのです。
特約が付いてないのになぜ?となりますが、これが最初にお話しした特約の改廃によるものなのです。
「特約」には正式名称がある
そもそも「特約」というのは略語で、正式には「特別保険約款」と呼びます。
「特別」とあるからには、そうでないものもあります。
それが「普通保険約款」と呼ばれるもので、この「普通保険約款」に記載されている契約内容は「主契約」と呼ばれます。
損保、生保問わず「普通保険約款」+「特別保険約款」=保険商品となります。
証券にすべてを記載することは不可能なので、証券と別に「約款集」が作成されていて契約時に契約者へ「ご契約のしおり」として交付されます。
「特約」の改廃には大きく2パターンある
定期的に各保険会社・共済団体は約款の改廃を行います。
その影響は当然「特約」にも及びます。
「特約」の改廃については2パターンあり、
- 廃止された
- 普通保険約款に組み込まれた
に分類できます。
「全入院全保障特約」は後者の「普通保険約款に組み込まれたパターン」です。
「全入院全保障特約」の内容は基本保障へ
普通保険約款に組み込まれた=「基本保障になった」ことにより特約として存続させる必要がなくなったのです。
こうして「全入院全保障特約」が無くなったにも関わらず、「特約の保障内容」は残った理由です。
この様な改定はJA共済だけでなく、他の生命保険会社も同様な内容になっています。
それには近年の入院事情が変化したことが大きく影響しています。
入院の短期化が進んできた
医療技術はまさに日進月歩の世界であり、10年前と比較しても新しい治療法や新薬の上市などは今も続いています。
医療技術の進歩は治療だけでなく診断技術の進歩も起こしました。
早期発見が可能になると、当然ですが必要な治療も大掛かりなものではなくなります。
治療が軽くて済めば入院期間も短くなるという流れなのです。
日帰り入院、手術も増えた
医療技術の進歩の中でより患者さんに負担の無い治療方法の模索も行われてきました。
そうした中で「入院なし」もしくは「一時的な入院のみ」で済むすなわち日帰り入院、手術が増えてきました。
これはとても喜ばしい事ですが、同時にある作用も生み出しました。
医療保険が医療技術の進歩に遅れ始めた
それは医療技術の進歩に医療保険の内容が合わなくなっていったのです。
それは契約者の不満、要望と言う形で保険会社へ伝えられました。
医療保険はあくまでも「医療行為を受けた場合の経済的負担を減らす」ことが最も求められる役割です。
それが果たせない場面が増えてきたのです。
医療保険は後から医療技術に合わせる
これはやむを得ない部分が大きいのですが、医療技術が進んで普及した段階で保険会社が医療保険を追随する形で改定します。
これが一般的(平均的)ならば、医療保険で対応できるようにしましょうというわけです。
そして保険会社側もまず「生命保険」を扱う保険会社が改定し、さらに遅れてJAを始めとする「共済」が同様の改定を行う場合が往々にしてあります。
これは今後も変わらない流れだと思います。
医療保険は大きく改定する可能性もあるので定期的な確認を
今回はJA共済の「全入院全保障特約」を例にして「特約」の改廃の仕組みなどについてご紹介しました。
注意して頂きたいのは、「約款改定は改定日以降契約分のみ対象になる」という事です。
すでに契約として成立しているものは、契約日時点での約款を適用するのが原則です。
つまり生命保険業界全体が対応するような大きな改定の場合は絶好の見直しチャンスなのです。
車と同じように「生命保険の定期点検」を習慣にすることが必要だと思います。