JA共済のがん重点医療共済は加入する前に検討を
目次
JA共済には「がん重点保障特約付き医療共済」と「がん共済」の2つがある
JA共済で取り扱う生命共済には他社の商品と同じように、「がん」に備えることを目的とした商品があります。
- がん重点保障特約付き医療共済
- がん共済
の2種類の商品です。
ですが、がん重点保障付き医療共済(以下がん重点医療共済)は筆者としては名前負け・・・もっと言ってしまうとオススメできる商品ではありません。
今回はJA共済のがん重点医療共済について、内容を確認しながらこれは頂けない・・・と考える部分についてご紹介していきます。
がん重点医療共済は医療共済に特約が付いている
先ほどもお話ししたように、がん重点医療共済は「がん重点保障特約」を付帯した医療共済です。
同じような名前の特約に「3大疾病重点保障特約」というものもありますが、違いは対象疾病の幅のみです。
がん重点保障特約は「がん」と「脳腫瘍」を対象にしており、3大疾病重点保障特約は「がん」「急性心筋梗塞」「脳卒中」を対象にしています。
これら特約を付帯する事で医療共済の入院共済金、手術共済金、放射線治療共済金が契約時に設定した金額の2倍で下りてくるというものです。
この「がん~」と「3大疾病~」では対象の狭い「がん~」の方が特約掛け金は安く設定されています。
「がん重点医療共済」と「がん共済」は内容が全くの別物
がん重点医療共済とがん共済は入院や手術、放射線治療で共済金が下りるのは同じなのですが、決定的に異なる点があります。
それは「がんの診断確定時」です。
「がん共済」では診断共済金(2回目以降は治療共済金)が下りますが、がん重点医療共済では「がんの診断確定時」には1円も共済金が下りてこないのです。
ちなみにこれが「3大疾病重点保障特約」を付帯した共済契約でも同じ取り扱いになります。
これは医療保険のがん特約とがん保険の関係性からすると珍しい例かもしれません。
医療保険「がん特約」はがん保険の簡易版のケースが多い
他社の商品を見てみると医療保険の「がん特約」はがん保険の簡易版として作られている場合があります。
例えば、東京海上日動あんしん生命の医療保険「メディカルKit NEO」とがん保険「がん治療支援保険NEO」で見てみます。
医療保険の特約として「診断一時金」、「初回のみの診断一時金上乗せ」、「抗がん剤」、「がん通院」がそれぞれ独立して付帯できます。
これら医療保険の特約として用意されているものは、がん保険でも主契約もしくは特約として用意されています。
医療保険とがん保険両方に加入するだけの負担は厳しいが、医療保険でがんの気になる部分のみ付帯することで保険料低減しながら備えることができるのです。
がん重点保障特約を付けなくてもJA共済の医療共済は元々「がん」に手厚くなっている
「がん」になった時に困らないようにがん重点保障特約と付けましょうとJA担当に言われた経験のあるかもいるかもしれません。
ですが、今回筆者ははっきり記載しておきます。
元々、JA共済の医療共済は「がん」になった時に手厚くなるように設計されています。
それは約款記載の「がん」での入院は1回あたりの入院日数と通算の入院日数それぞれを無制限にする」という規定に由来します。
「がん」は出せる治療費によって治療方法、寛解率も変わる疾病です。
なので入院費の部分で無制限に出してくれるというのは、その分で出るはずだった支出を闘病中の生活費などに充てることも可能になります。
したがってがん重点保障特約を付けなくても、「がん」は元々重点的に手厚くされているのです。
ただし医療共済も「今のがん治療」には追い付いていない
JA共済の医療共済が「がん」に手厚いと言っても、それは「入院が長期化した場合」を想定しての「手厚さ」です。
最近の「がん」での平均入院日数はなんと21日になっています。
もちろん「がん」の種類によっては長期化しやすい部位の「がん」は存在します。
女優の川島なおみさんが罹患した「胆管がん」は入院が1年以上になる場合もめずらしくありません。
逆を返すと21日に満たない入院期間の「がん」も存在するということです。
昔は入院が1か月以上に及んだ「胃がん」などは入院期間が短くなってきています。
入院期間が短くなればその分だけ赤字になりやすい構造になっているのが「医療共済」の正体です。
なぜならば近年のがん治療は「短期入院」+「長期通院」で構成されているからです。
これからのがん保障は「診断一時金」と「通院保障」だと思う
近年のがん治療の実情も鑑みると今後も「短期入院」+「長期通院」の流れは変わらないと思います。
「長期通院」の背景としては
- 医療の進歩で早期発見、短期入院化が進んできた
- 病院側が利益のためにベッド回転率を上げようとしている
という2つの要因があります。
そして「長期通院」が家計にとって曲者なのです。
通院治療では抗がん剤を使用するケースが多いのですが、抗がん剤の副作用として「体がだるくなる」ケースがあります。
地方部では特に自家用車が主力移動手段なので、体がだるくなると自分で運転できなくなり、タクシーを利用することもあるのですが、交通費は経済的に大きな負担となります。
従って
- 自宅から最も近く、がん治療の評判が良い病院まで公共交通機関を使用した場合の交通費がいくらなのか?
- その費用が数年間に渡って発生した場合に貯蓄などで賄えるのか?
を検討して、自費負担が難しいならば医療保険やがん保険で「通院保障」を付けるのが良いと考えます。
2つ目が「長期通院」中に仕事が可能なのか?という点です。
初期の「がん」ならば可能かもしれませんが、がん治療を理由に仕事を辞める方がいるのも事実です。
そうなると治療の初期費用や当面の生活費をどうするか?という悩みが次にやってきます。
そこに「診断一時金」を貰う事で期間全部は難しくても、前半は賄えることが想定されます。
落ち着いたところで改めて、勤めに行けるのか?などを検討できるので精神的余裕も生まれます。
JA共済の医療共済を続けるならば、他社のがん保険と組み合わせた方が良い
今回はJA共済の医療共済「がん重点保障特約」について、特徴と筆者が持っている懸念点をご紹介しました。
この様に記事にしてみて、改めて「がん重点保障特約」は名前負けだなぁと感じています。
この特約を付けるなら、他社の診断一時金のみタイプのがん保険に入るほうがまだ「道具としての保険」の有用性はあるように感じます。
保険の見直しをする際には、ぜひ広い視点で検討を行うようにしましょう!!