外貨建て保険で苦情・トラブルに発展する「積立機能」の罠
外貨建て保険で見られる苦情・トラブル
低金利である国内において、より高い予定利率を求めて外貨建て保険を検討されるケースが非常に多くなってきましたが、「こんなはずじゃなかった」と苦情に発展してしまうケースも少なくありません。(金融庁が是正指導を出したことでも話題になりましたね。)
こういった話を聞くと、高い販売手数料を稼げる外貨建て保険を飯の種にしている「自称専門家」はこぞって、外貨建て保険の魅力ばかり発信していきます。
『米ドル、豪ドル等の外貨への資産分散の必要性』『外貨のまま保持しておけば好きなタイミングで円に変換できるから損はしない』といった話はまだかわいいもので、『積立利率は3%保証で運用されていきます』といったいかにも実際の利率が3%もあるかのような、誤解を招く説明を行う者もまだまだいるようです。
外貨建て保険に対して近年増えている苦情・トラブルとは、決して「為替リスク」による損失がどうこうといった類のものではありません。
それは、「死亡保障」と「老後資金の形成」があたかも「両立する」といった誤解を招くような説明がなされてしまっている点にあります。
今回は、今までの記事と着眼点を変えて、外貨建て保険(外貨保険)で苦情に発展するであろう気を付けなければいけない点についてお話していきます。
一般的な外貨建て保険
一般的に、外貨建て保険の保険種類は、一生涯の死亡保障を確保できる「終身保険」がほとんどです。
終身保険という仕組みは、一生涯の死亡保障を確保できると同時に、支払う保険料が積立てられていく貯蓄性があります。
支払う保険料が「掛け捨て」と「貯まる」どちらが良いですか?と問われれば、人間の本能として「貯まる」方を好むのは至極当然のことです。
しかし、ここで多くの方が誤解してしまうのは、「積立てられていく保険料を将来自由に出し入れできる」という預貯金のような積立金ではありません。
この積み立てられていくお金というのは、「解約返戻金」という名の積立金なのです。
解約返戻金は預貯金ではない
察しの良い方ならもうお分かりかと思いますが、「解約返戻金」とは、文字通り「保険契約を解約」して初めて手元に戻ってくるお金です。
しかしここで問題となるのは、保険契約を解約してしまえば、最大の加入目的「一生涯の死亡保障」はどうなるでしょうか?
自分が万が一亡くなった時の葬儀代のため、家族に少しでも残したいという思いやりの気持ち、終身保険を選ばれる理由としては様々ですが、共通していることは「家族に死亡保険金を残す」ことです。
解約返戻金を手にするということは、その加入目的を自ら放棄することと同義となります。
せっかく貯まっている資金があるのに、死亡保障を捨てなければならない、これが近年多い「苦情」の根源になります。
契約者貸付制度
参考までに、解約返戻金を自由に出し入れできるのは、「契約者貸付」といわれる制度となります。
その時点での解約返戻金額の90%を上限に、「借りる」ことができます。
しかし、当然「借りている」お金となりますので、年利息を支払う義務を負うことになりますし、返済無きまま死亡してしまった場合には、借入金額分が死亡保険金から「差し引かれて」支払われることになります。
生命保険の役割
円建てであろうが、外貨建てであろうが、「何のため」に死亡保険が必要なのか、加入目的をしっかりとクリアにすることがとても重要です。
生命保険はどこまでいっても生命保険なのであり、決して「お金を貯める手段」ではありません。
自分が亡くなってしまった際に家族に残すための保険金という名の愛情、生命保険はそれ以上でもそれ以下でもないのではないでしょうか?
つまり、自分に何かあった時にお金を残すための仕組みに「お金が貯まる」という機能があるということは、保険料を無駄に高額化にしてしまう要因にしかならない、と私は考えます。
終身保険の限界
一生涯の死亡保障に「積立機能」は不要であると論じましたが、終身保険という商品は、一部例外を除いて、「必ず」解約返戻金が発生してしまう仕組みとなっています。
お金が貯まってしまうという機能があるため、掛け捨て型の定期保険と比べると、終身保険の保険料が高くなっているとも言えます。(他に保険期間が一生涯という点もありますが。)
しかし、解約するつもりがない(一生涯の死亡保障のための加入)のであれば、解約返戻金が発生してしまい、保険料が高くなってしまう終身保険に加入してしまうのは得策とは言えません。
ではもし仮に、終身保険にもかかわらず、解約返戻金がない割安な保険料で一生涯の死亡保障を確保できる保険があったらいかがでしょうか?
唯一、オリックス生命の死亡保障付医療保険という商品であれば、終身保険にもかかわらず解約返戻金がない仕組みをとっており、かつ、一生涯の医療保障も確保できる、非常に優れた保険があるため、興味がある方はお調べになってみてください。
外貨建て保険で苦情に発展する「積立機能」の罠のまとめ
利率が高い、返戻率が高い、外貨建て保険を検討されている方には、「損得」の観点ばかりで保険を選んでしまっているように思えます。
そもそも「何のため」に生命保険が必要なのか、という点を考えると、いかに「積立機能」が無駄であることが分かるでしょう。(そういう考えの元では、外貨建て保険のランキングや比較は無意味になりますね。)
結果、欲をかいて過剰保障額で保険契約をしてしまい、日々の生活が困窮してしまっても辞めるに辞められない状況に陥ってしまう図が容易に想像できます。
お金を貯めたいのであれば、決して非効率的な生命保険を使うのではなく、個人型確定拠出年金iDeCoやつみたてNISAといった手段を活用したほうが、遥かにパフォーマンスも高くなります。
外貨建て保険に加入して喜ぶのは、保険会社と保険販売者のみ、と最後に触れておきますが、そういう価値観に魅力を感じる方の加入を否定することはしません。