見かけの保険料の安さに騙されるな!ソニー生命のドル建てリビングベネフィットのデメリット
目次
ソニー生命のドル建てリビングベネフィットのデメリット
2017年10月にソニー生命から新商品が発売となりました。
新商品と言っても、従来から存在する生前給付終身保険(生活保障型)「リビングベネフィット」という商品の「米ドル建て」の商品になります。
米ドル建ての商品と言えば、予定利率の高さ故、円建ての同種商品よりも見かけ上の保険料が割安になりがちですが、この「リビングベネフィット」という商品は、それ自体に大きなデメリットを有している商品です。
他社の同種商品とその商品性を比較しながら、デメリットを露呈させ、一人でも多くの方の注意喚起を目的として論じたいと思います。
なぜドル建て?
元々円建ての商品として存在していたものを、あえて「ドル建て」として新たに発売する理由。
それは、今まで保険会社側で圧倒的な資金力に物を言わせて、様々な運用リスクの責任を引き受けていましたが、マイナス金利政策以降、これ以上保険会社側でその責任を引き受けきれず、その責任を契約者側に転嫁しようという試みがあります。
保険会社は、実際には膨大な数の契約者から支払われた保険料を、金融機関として国内外の金融商品に投資して運用を行っています。
運用成績については保険会社の責任の下で、うまくいっても失敗しても、保険料・保険金・解約返戻金に転嫁することはありません。
しかし、ドル建ての商品であれば、少なくとも「為替リスク」だけは契約者側に転嫁できるため、一見、支払う保険料は割安になりますが、将来の円安における保険料の高騰リスクについては保険会社は知ったこっちゃありませんし、将来受け取るであろう保険金や解約返戻金の変動リスクについては、その全責任を契約者側に押し付けることができる、都合が良い商品性なのです。
ドル建てリビングベネフィットの特徴
ソニー生命のドル建てリビングベネフィット(米ドル建生活保障・終身型)「米ドル建生前給付終身保険(生活保障型)」の特徴をいくつか挙げてみます。
保険金が支払われる要件が4つ存在します。
「死亡保険金」「特定疾病保険金」「障害保険金」「介護保険金」の4つです。
このうち、いずれかの保険金が支払われた時点で、以降の保障は「消滅」します。
ソニー生命のリビングベネフィット(米ドル建生活保障・終身型)の評判については、「ソニー生命のリビングベネフィットの評判を斬る!」の記事もご参照ください。
死亡保険金
いわゆる「死亡保障」の役割を果たします。
死亡時もしくは高度障害時に指定した金額が給付されます。
特定疾病保険金
「がん」「急性心筋梗塞」「脳卒中」の三大疾病で【所定】の状態になったときに支給されます。
この【所定】が曲者なのです。
がんについては、「上皮内がん」「悪性黒色腫を除く皮膚がん」を除きすべてのがんと「診断」されれば支給要件を満たします。
しかし、「急性心筋梗塞」「脳卒中」に関しては、「発病し、医師の診断を受けた日から60日以上労働の制限を必要」と医師に診断をもらう必要があります。
言い換えると、軽微な状態では対象外となってしまうのです。
障害保険金
身体障害者福祉法における障害等級1級、2級、3級に該当した場合に支給されます。
そもそも、身体障碍者として認定を受ける程度の状態は、障害基礎年金や障害厚生年金の支給対象と見なされるケースが多いので、あえて民間の生命保険で「障害状態」を手厚くする「必要性」は薄いと言えるでしょう。
介護保険金
満65歳未満の被保険者が、「①要介護状態に該当」「②要介護状態に該当してから継続して180日以上あること」の2つに該当する、もしくは、公的介護保険制度における要介護2以上に該当していると認定していること、が必要要件となります。
こちらも、そもそも65歳未満における要介護状態とは、非常に障害状態と密接な関係があり、障害年金の支給対象となるケースがほとんどです。
別に終身保険に無料で付加できる「介護前払特約」を付加しておけば、この商品での介護保険金を頼りにする必要性もありません。
ドル建てリビングベネフィットの試算
契約年齢:30歳男性 保険期間:終身 保険料払込期間:65歳 保険金額:50,000ドル(日本円約500万円)という条件で試算を行ってみます。
月払い保険料:85.25ドル
66歳時返戻率:102.86%(解約返戻金36,830ドル ÷ 支払い保険料35,805ドル)
2017年11月14日現在の支払い為替レートは「1ドル=113.67円」になっていますので、円で支払う保険料は9,690円となります。
66歳時の返戻率は102.86%ですので、仮に保険期間満了まで為替レートが一定だったと仮定すると、損失となる為替レートは「1ドル=110.50円」と、非常に浅く、損失となるリスクは高いと思われます。
ドル建てリビングベネフィットの最大のデメリット
そもそもこの保障は、三大疾病(がん・急性心筋梗塞・脳卒中)に対する備えとしての保障になります。
しかし、肝心な三大疾病における保険金支給の「要件」が時代遅れすぎるという点です。
がんについては、「医師による診断」で支給となるので問題はありません。
「急性心筋梗塞」と「脳卒中」の支給要件に問題があります。
「急性心筋梗塞」と「脳卒中」
上記で説明した通り、「発病し、医師の診断を受けた日から60日以上労働の制限を必要」と医師に診断をもらう必要があります。
早期発見による投薬治療により「60日」という日数に満たないで退院された場合に、保険金が支給されません。
他社の同種の商品では、「60日以上の労働制限」のほかに「治療による手術行為」があった時点で日数を問わず、保険金を支給するタイプが存在し始めており、スタンダードになりつつあります。
三大疾病として位置付けられているこれらの疾病に罹患しても、場合によっては保険金がおりないといったケースが存在してしまう時点で、保障としては失格であると言わざるを得ません。
いざというときに「使えない」「役に経たない」保険ほど意味のないものはありません。
ドル建てリビングベネフィットを他社商品と比較
例えば、オリックス生命には特定疾病保障保険「ウィズ」という商品が存在します。
これは、三大疾病における保険金支給要件は上記のようになっています。
死亡保障と特定疾病における保障内容となり、必要性の薄い障害保険金と介護保険金はありません。
ウィズの試算
同一条件で保険料と返戻率を試算してみると以下の通りになります。
月払い保険料:11,230円 66歳返戻率:99.4%(解約返戻金4,688,500円 ÷ 支払い保険料4,716,600円)
現時点における保険料だけを見比べると、円建てである分ウィズのほうが若干保険料が高めであり、かつ、返戻率は若干劣ります。(ドル建てリビングベネフィットと同様、支払い完了以降の解約返戻金は増えていきます。)
しかし何より、特定疾病における要件が緩く、「為替リスク」による支払い保険料・保険金・解約返戻金の変動がありませんので、万が一、支払う保険料が高くなって保険を継続できないといったリスクを回避できますし、円高による受取金額が少なくなるといったこともありません。
安心のために受け取る保険金額が「変わらない」というのは、安心のために加入する生命保険の本文なのではないでしょうか?
見かけの保険料の安さに騙されるな!ソニー生命のドル建てリビングベネフィットのデメリット、のまとめ
ドル建て保険に加入する際には、どうしても「支払う保険料」や「貯まる金額」ばかりに目が行きがちです。
しかし、いざというときに本当に役に立つ仕組みになってなければ、加入する意味そのものがありません。
ソニー生命のドル建てリビングベネフィットに関しては、保険金の支給要件のハードルが一昔前で高く、いざという時に使えないリスクが出てきます。
目先のちょっと安い保険料に騙されることなく(保険料が増えていく可能性もあります)、いざというときに役に立つ仕組みを見極める必要があると思います
参考:ソニー生命の米ドル建生前給付終身保険が気になる方におすすめの記事
ソニー生命の米ドル建生前給付終身保険(リビングベネフィット)について気になっている人は、以下のような記事も参考にしてみてください。
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