保障を「豪ドル建て保険」で準備することに対するリスクと違和感
目次
豪ドル建て保険のリスクとコスト
オーストラリアという国へ現在投資をされていらっしゃる方であれば、鉄鉱石や石油などが豊富な資源国、かつ、金利が高い国ということは周知の事実です。
世界中で日々そのニーズが高まっている豊富な資源を有し、2017年8月現在1.50%という日本に比べて圧倒的に高い政策金利を採っており、かつ、「先進国」であるというのも魅力の一つでしょう。
銀行や証券会社で、オーストラリアドル「豪ドル」での運用アドバイスを受けたことがある方も多いではないでしょうか。
投資対象国として良いか悪いかといった議論はさて置き、個人的に私は、安心のために加入する「生命保険」を、「豪ドル」で準備する行為に対して「違和感」を感じざるを得ません。
保障を「米ドル」で持つことについては、下記のような数多くの記事でそのメリットについて言及してきましたが、豪ドル通貨が影響を及ぼす「リスクの度合い」と「コスト」について言及してみたいと思います。
豪ドル建て保険と米ドル建て保険の違い
商品性や基本的な部分は、豪ドル建て保険・米ドル建て保険どちらでも大きな違いはありません。
保険料を豪ドルで支払い、保険金・解約返戻金などを豪ドルで受け取る、豪ドル通貨で支払うことも可能ですが、一般的には支払い時の「円ー豪ドルの為替レート」で換金して支払い、受け取り時にも同様に、その時点での「為替レート」で換金して円で受け取るか、豪ドル通貨で受け取るかを選択する、という形になります。
違いは、「リスク度合いの大きさ」と「コスト」の2点にあります。
それぞれ見ていきましょう。
豪ドルの「為替リスク」の特徴
豪ドルの特徴
「リスク」という言葉を使っていますが、「危険性」という意味ではなく「振れ幅」を意味し、リスクが高いとは、その変動幅が大きいことを意味し、プラス時の利益がより大きくなり、マイナス時の損失もより大きくなりうる、と理解しておけば良いでしょう。
資源国通貨としての豪ドルは、金などを含む資源価格や、原油価格が上昇してくると、一般的にはその価値が上がり、豪ドル高・円安に動くと言われています。
・金をはじめとする資源価格が上昇 → オーストラリアからの輸出額が増える → 豪ドル高
・原油価格が上昇 → インフレ懸念から金が買われる → 豪ドル高
資源価格や原油価格との連動性が強い通貨であるという特徴があります。
豪ドルの為替変動リスク
豪ドルは、主要先進国通貨の中では、一番為替変動リスクが大きいと言われています。
ニッセイ基礎研究所の資料による、2006年6月から2016年5月までの10年間において、豪ドルと米ドルの対円レートに対しての月間騰落率の標準偏差(ばらつき)のデータを見ると一目瞭然です。
豪ドルは円に対して4.8%と主要先進国通貨では最大のばらつきがあり、新興国通貨並みの結果となっています。
一方、米ドルは円に対して2.8%となっており、豪ドルは米ドルより約70%以上大きい振れ幅です。
これは、豪ドルは米ドルよりも「約1.7倍」リスクが高いと言い換えることができます。
(参考URL:http://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=53292&pno=2?site=nli)
豪ドルの「コスト」
一般的に、外貨建ての保険は、保険料を支払う都度、もしくは、保険金・解約返戻金を受け取る都度、その時点で会社が定めた為替レートに対し「為替手数料」という両替のコストが発生します。
ソニー生命では、支払い時・受け取り時にそれぞれ「0.01円」、メットライフ生命では、支払い時・受け取り時にそれぞれ「0.5円」、ジブラルタ生命では、支払い時に「0.5円」・受け取り時に「0.01円」と会社によってその金額は異なります。
しかし、一般的には米ドルの為替手数料よりも、豪ドルの為替手数料のほうが高くなることが多いです。
ジブラルタ生命では、支払い時に「0.5円」・受け取り時に「0.03円」、メットライフ生命は、支払い時・受け取り時それぞれ米ドルと変わらず「0.5円」、三井生命では、支払い時・受け取り時にそれぞれ「0.25円」となっています。
保険会社によって、為替手数料が変わってくるので、もし検討する場合は、こうしたコストも考慮する必要がありそうです。
豪ドル建て保険のパフォーマンス
リスク度合いが米ドルよりも大きいため、「運用面」においては豪ドルのほうがパフォーマンスが優れているのが一般的です。
例えば、メットライフ生命で取り扱っている「外貨建て一時払い終身保険」でその違いを見てみます。
この商品は、積立利率に最低保証を設けており、米ドルは「年2.00%」、豪ドルは「年2.25%」、この時点で豪ドルの方が利率が高くなることになります。
「保障」としてか「運用」としてか
一時払い型
豪ドル建ての保険は、保険期間分の保険料を一括で支払う「一時払い型」の商品が一般的になっています。
これは、預けた金額を運用しながら保障を持つというダブルの目的がありますが、この加入の仕方は「保障」目的というよりは「運用」目的の要素が大きくなっています。
それは、お金を運用して増やすことを目的としている以上、将来そのお金を受け取るために「解約」することを前提としているからです。
家族のために一生涯の保障が欲しいといった目的の場合は、解約前提で加入することはありません。
生命保険の前提は、「より少ない保険料で最大限大きな保障を得る」ことなので、加入時点で支払額が確定してしまう一時払い型の保険は「保障」としては向かないのが私の考えです。
月々(半年ごと、年ごと)支払い型
「保障」目的であれば、こちらのタイプが一般的に向いていると言われています。
そこで、将来の保障を「豪ドル」で持つことについてあらためて考えてみます。
私は、世界基軸通貨である米ドルであれば、リスクの度合いの観点から、保障としては問題ないと考えています。(過去の多くの記事でも触れてきました。)
しかし、リスクの度合いが高く、コストも余計にかかってしまう「豪ドル」で保障を持つことには、不安を感じざるを得ません。
それは、基軸通貨でもない「豪ドル」を、私の亡き後に遺族が受け取ったとき、どのようなことを思うだろうと悩んでしまうからです。
為替変動しやすい豪ドルにおいて有効なドルコスト平均法について解説した「マニュライフ生命の豪ドル建て保険は個人年金がお勧め!変動しやすい豪ドル建てでドルコスト平均法が使える」の記事も併せて読んでみてください。
保険金受取人がどう思うか
豪ドルの変動幅は、米ドルと比べ約1.7倍以上大きく動くリスクがあることは、過去のデータから分かっています。
このデータを知ってしまった以上、私は余計な「不安」を感じてしまいました。
何かあった時の「安心」のために加入するのに、「不安」を感じて加入するのは本末転倒だと感じます。
しかし、捉え方は人それぞれなので、そのリスクを許容できるのであれば、「自己責任」で加入することを否定はしません。
しかし、その責任は、自分ではなく「遺族」が背負うものになりますが。
保障を「豪ドル建て保険」で準備することに対するリスクと違和感のまとめ
今回の記事は、完全に「個人的な価値観」から、豪ドル建て保険についての意見を述べてみました。
外貨と聞くと、どうしてもリスクとリターンを思い浮かべてしまいます。
しかし、生命保険である以上、「安心」が保証されていなければ、「私は」意味がないのではと思います。
参考:豪ドル保険について詳しく知りたい人におすすめの記事
豪ドル建ての保険について気になっている人は、下記の記事もチェックしてみてください。
豪ドル建ての保険商品について知りたい人は
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