ドリームクルーズプラスは貯蓄性を求めるにはリスキー商品
目次
豪ドル建て終身保険「ドリームクルーズプラス」
三井生命で取り扱っている外貨建終身保険「ドリームクルーズプラス」について解説してみます。
この商品は、高金利通貨である「オーストラリアドル建て(以下、豪ドル建て)」での商品であり、一生涯の終身保障と高金利通貨による高い貯蓄率を期待できる特徴となっています。
外貨建て保険は、依然として低金利に悩む日本において、相対的に高い金利を享受できるため、主に貯蓄性を重視する意向の方には人気が高まってきている商品ですが、反面、外貨建て保険に付きものな「為替リスク」とうまく付き合っていく必要があります。
特に、豪ドルの為替変動は、世界基軸通貨である米ドルと比較しても大きく、リスクが高い通貨になります。
ドリームクルーズプラスの商品性に合わせて、為替リスクを交えて解説してみたいと思います。
ドリームクルーズプラスの特徴
基本的な商品の仕組みとしては、一般的な外貨建て終身保険となっています。
支払う保険料については、支払い時点での為替レートで円を豪ドルに変換して支払うことになり、また保険金・解約返戻金もその時点での為替レートで豪ドルを円に変換して受け取ることになります。
そのため、支払う保険料や受け取る保険金額は将来の為替レート次第になるため、日本円での金額が予測できない、「為替リスク」を有する商品です。
保険料の支払いが終了した以降は、一生涯の保障が確保されると同時に、必要に応じて解約することで貯まっている解約返戻金を手元に戻すことができる仕組みになっています。
何点か、ドリームクルーズプラス固有の特徴を見てみます。
「15年払い」の平準払い方式の外貨建て終身保険
ドリームクルーズプラスは、保険料の払込期間をが「15年」のみとなっています。
保険料が払込期間中に上がることはありませんが、15年払いとなりますのでご注意ください。
契約年齢範囲は、「0歳から65歳」までとなっているようです。
3年毎の生存給付金
ドリームクルーズプラスは、契約から3年毎(3年、6年、9年、12年、15年)に、生存給付金として「クルーズボーナス」が支給され、保険金額の3%に該当する金額が最初の4回、保険金額の15%に該当する金額が最後の1回、計5回支給されます。
保険金額に対して合計27%の金額が支給されることになります。
この給付金は「受け取る」か豪ドルのまま「据え置く」かを選択することができます。
解約返戻金を「年金方式」で受給可能
一般的に、解約返戻金は一時金で支給されることがほとんどですが、「年金払移行特約」を付加することにより、年金という形で解約返戻金を受給できます。
5・10・15・20・25・30年の「確定年金」を選択することができ、一時金で受け取るよりも、年金受給年数が多くなればなるほど、トータルで受給できる金額は大きくなります。
また、保険金や解約返戻金、生存給付金は、豪ドルで受け取るか、それが支給される時点での為替レートで変換して円で受け取るかを選択することが可能です。
予定利率の15年毎の見直し
ドリームクルーズプラスは、15年毎に予定利率の見直しが行われます。
契約時の予定利率は15年間据え置きされ、15年後に予定利率の見直しが行われることになりますが、最低保証利率が2.00%となっているため、万が一オーストラリア情勢の悪化による金利水準の低迷が起こっていたとしても、2.00%を下回ることはありません。
逆に、契約時よりも高い予定利率への更改があったときには、高運用が見込めることになります。
しかし、2017年11月現在の、契約時の予定利率は2.50%、最低保証予定利率は2.00%ではありますが、契約の維持などにかかる費用等が控除されるため、実際の利回りは予定利率を下回ることにご注意ください。
為替手数料
ドリームクルーズプラスは、保険料を支払うとき、保険金・解約返戻金・生存給付金を受け取るとき、その時点での豪ドル為替レートで変換することになりますが、円を豪ドルに替えるとき、豪ドルを円に替えるとき、それぞれに為替手数料が必要となります。
三井生命では、それぞれ片道0.25円となっているようです。
豪ドル通貨の状況を考えると、片道0.25円という金額は安いという印象を受けますが、それでも契約者が負担するコストには違いがないので留意する必要がありそうです。
ドリームクルーズプラスの試算
契約年齢:30歳男性 保険金額:100,000豪ドル 保険料払込期間:15年 という条件で実際に試算してみます。
月払い保険料:463.30豪ドル
2017年11月6日現在の豪ドルレートは、「1豪ドル=88.02円」のようですので、日本円で40,880円(円未満四捨五入)となります。
生存給付金(クルーズボーナス)を受け取った場合
生存給付金は、15年間において保険金額の27%、つまり保険金額100,000豪ドルであれば27,000豪ドル支給されることになります。
この生存給付金を「受け取り」を選択した場合の、解約返戻金と支払保険料の関係を見てみます。
15年間で支払う保険料総額は「83,394.00豪ドル」になりますが、15年目の解約返戻金額は「56,570.00豪ドル」、返戻率は「67.83%」となります。
契約返戻金額が支払保険料総額を超えてくる経過年数は、36年目とかなり先になってしまうようです。
生存給付金(クルーズボーナス)を据え置いた場合
生存給付金を「据え置き」を選択した場合ですが、15年目における解約返戻金額は「56,570.00豪ドル」と変わりませんが、生存給付金額合計額は「27,695.68豪ドル」となります。
生存給付金額が「27,000豪ドル」ではないのは、生存給付金を据え置くことにより、予定利率で運用されているためです。
解約返戻金と生存給付金を合計した金額は「85,375.58豪ドル」となり、返戻率は「101.05%」となります。
生存給付金(クルーズボーナス)の存在
生存給付金を「受け取り」を選択し、使ってしまったとしても、トータルで受け取った金額という捉え方をすれば、「損」をした訳ではありません。
しかし、15年目にいざ保険を解約した場合、戻ってくる金額は支払った金額よりも大幅に減ってしまっているため、このあたりをどう捉えるかに依るでしょう。
前倒しで受け取るか、後でまとめて受け取るか、だけの違いになります。
豪ドルのリスク
生存給付金を据え置いた場合の15年目の返戻率は、「101.05%」となりました。
この数字は、豪ドルの為替変動のブレ幅を考えると、少々怖い返戻率という印象を持ちます。
と言いますのも、豪ドルの為替リスクは、米ドルのそれと比べて「約1.7倍」変動幅が大きいと言われています。(実際、リーマンショック(2008年)後、半年の内に1豪ドルが100円台から一気に50円台まで下がったこともあります。)
契約時の豪ドル為替レート「1豪ドル=88.02円」が仮に15年ずっと一定だったと仮定すると、トータルで支払う日本円額は「7,340,339.88円」となりますが、損失が生じてしまう為替レートは「1豪ドル=85.97円」となります。(7,340,339.88円 ÷ 85,375.58豪ドル)
契約時の為替レートから、たった「2円」の円高で損失が生じてしまう返戻率は、米ドルよりもずっと為替リスクが大きいことを考えると、少々リスキーのように感じます。
ドリームクルーズワイドについては、「ドル建て終身保険に加入する時のリスクは商品比較をしないことにもある」の記事でも触れています。
ドリームクルーズプラスは貯蓄性を求めるにはリスキー商品のまとめ
単純な返戻率では、生存給付金を据え置くことで100%を超える成果を期待できる商品ではありますが、変動リスクが大きい「豪ドル」であることを踏まえると、危険な匂いがします。
解約返戻金を「年金受取り」することで、さらにトータルで受給できる金額を増やすことができるとはいえ、豪ドルの変動は本当に大きいものであり、軽く「損失」が生じる恐れがあるでしょう。
単純な返戻率で商品を決めるのではなく、豪ドルの動きを常に注視しなければいけないですし、過去の大きい変動幅という実証例を考慮すると、積極的に加入を検討する価値を見い出せませんでした。
参考:三井生命のドリームクルーズプラスが気になる人におすすめの記事
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